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Google検索の未来:AI ModeとAI Overviewsの大規模アップデートがビジネスに与える影響

この記事のポイント

Googleは2025年後半から2026年初頭にかけて、検索体験を根本から変える「AI Mode」および「AI Overviews」の大規模アップデートを順次展開している。ユーザーが検索結果のリンクをクリックする前に回答を得られるケースが増えており、従来のSEO流入・広告クリック・問い合わせ導線が変わりつつある。マーケティング・営業・カスタマーサクセス(CS)の担当者にとって、KPIの再定義とコンテンツ戦略の見直しを検討すべき局面に差し掛かっていると考えられる。


何が変わっているのか——最新アップデートの概要

「AI Mode」:検索が"会話"になる

Googleが公式ブログ(2026年1月更新)で発表した「AI Mode」は、検索インターフェースに組み込まれた対話型AIアシスタント機能だ。従来の検索は「キーワード入力→リンク一覧表示→サイトへ移動」という3ステップが基本だったが、AI Modeでは次のような会話型の体験に変わる。

  1. 自然言語で質問を入力する
  2. AIが複数ソースを統合して直接回答する
  3. 必要に応じてフォローアップ質問ができる

Googleの公式発表によれば、AI Modeは段階的にグローバル展開が進んでおり、対応言語・地域は順次拡大中とされている。日本語対応の時期は執筆時点(2026年初頭)で明確に公表されていないが、過去のAI Overviewsの展開ペースを踏まえると、近い将来に日本市場へ本格導入される可能性は高いと筆者は見ている。

「AI Overviews」:表示範囲と精度が拡大

AI Overviews※1は2024年に米国でローンチされ、検索結果ページの最上部にAI生成の要約文を表示する機能だ。今回のアップデートでGoogleが説明している主な強化点は以下のとおりだ。

  • 回答精度の向上:Geminiモデルの最新バージョンが統合され、複雑な質問に対しても信頼度の高い回答を生成できるようになったとされる
  • 表示範囲の拡大:従来は一部クエリのみに表示されていたが、より広いカテゴリの検索クエリへ展開されるようになっている
  • マルチモーダル対応:テキストだけでなく、画像や動画を含む形式での回答提示が可能になりつつある
  • 「Ask anything」体験:公式ブログのタイトルにもある通り、ユーザーが複雑な質問を自然言語で投げかけられるシームレスな体験が目指されている

Google Photosとの連携が示す方向性

同時期に発表されたGoogle Photosの「Askボタン」機能は、一見すると検索とは無関係に思えるが、重要な示唆を含んでいる。写真に対して自然言語で質問できるこの機能は、Googleがあらゆるサービス上で「検索=質問に答えること」という体験を統一しようとしていることを示している。検索エンジンとAIアシスタントの境界線は、今後さらに曖昧になっていくと予想される。


ビジネスへの影響——なぜ今、動く必要があるのか

「ゼロクリック検索」がさらに加速する

SEO業界では以前から「ゼロクリック検索※2」が議論されてきた。AI OverviewsとAI Modeの普及は、このゼロクリック検索を質的にも量的にも拡大させると考えられる。自社の製品・サービス情報がAIによって要約・統合されて提示される場合、ユーザーは自社サイトを訪問せずに比較・検討を終えてしまう可能性がある。

特に影響が大きいと想定される場面を挙げる。

  • 価格・スペック比較が頻繁に行われるBtoCの商品・サービス
  • 「〇〇とは何か」「〇〇の使い方」といった情報収集フェーズのBtoBクエリ
  • 競合比較(「A社 vs B社」「〇〇ツール おすすめ」など)

「指名検索」の戦略的価値が上がる

一方で、ブランド名や固有のサービス名を直接検索する「指名検索※3」は、AIによる汎用的な回答では代替されにくい。ユーザーが「このブランドについてもっと知りたい」「この会社に問い合わせたい」という明確な意図を持って検索する場合、AI Overviewsが介在しても最終的なクリックは発生しやすいとされる。ブランド認知と指名検索数の向上が、SEO戦略の新たな核心になりうる。

購買プロセスが「見えにくく」なる

マーケティングファネルの観点からも変化が生じる。従来は「検索→サイト訪問→資料DL→問い合わせ」というプロセスをアクセス解析ツールで追跡できた。しかしAI Modeによる回答完結型の体験が増えると、ユーザーがどの情報に触れて購買判断を形成したかが追跡困難になる可能性がある。アトリビューション(貢献度測定)の精度低下は、広告投資対効果の評価にも影響しうる。


部門別の影響——マーケ・営業・CSへの波及

マーケティング部門

オーガニック流入数(SEOからのアクセス)が減少する可能性がある一方で、AIに「引用・参照」されるコンテンツの価値は上がると考えられる。AI Overviewsは複数のWebソースを参照して回答を生成するため、AIに引用されやすい高品質コンテンツを持つサイトは、直接クリックされなくても間接的なブランド露出を得られる可能性がある。

また、ページビュー(PV)やセッション数だけをKPIにしていると実態を見誤るリスクがある。ブランド検索数・インプレッション・AI引用頻度(現状では計測困難だが、将来的なツール整備が期待される)など、新たな指標の検討が求められる。

営業部門

BtoBの営業プロセスでは、商談前にバイヤーが自社でリサーチを完結させる「セルフサービス化」がさらに進む可能性がある。AI Modeを使えば「〇〇業界のCRMツール比較」「ERPの導入コスト相場」といった情報を短時間で収集できるため、初回商談時点でバイヤーの情報習熟度が高くなると予想される。営業担当者には、AIが提供できない「個社に最適化した提案」「信頼関係の構築」「複雑な要件定義のサポート」といった付加価値がより一層求められるだろう。

カスタマーサクセス(CS)部門

「よくある質問(FAQ)」や「使い方ガイド」に相当するコンテンツは、AI Overviewsによってユーザーが自己解決できるようになる可能性がある。これはCS部門への問い合わせ件数の変化(増減どちらの方向にも動きうる)につながりうる。単純な質問はAIが吸収し、より複雑・感情的・個別的な問い合わせが残るという二極化が起きる可能性も考えられる。CSチームの対応スキルの高度化が求められるかもしれない。


実務アクション——今日から着手できる6つのこと

  1. KPIを多層化する

    オーガニック流入数・PVだけをSEO成果の指標にするリスクを経営層・上長と共有し、指名検索数・ブランドインプレッション・商談化率・問い合わせの質など複数の指標を組み合わせた評価体制への移行を検討する。まずGoogle Search Consoleで指名クエリのインプレッションと順位を定点観測する習慣をつけることが第一歩だ。

  2. 「AIに引用されやすい」コンテンツに投資する

    AI Overviewsは信頼性・専門性・独自性の高いコンテンツを優先的に参照するとされている。自社の専門知識や独自データ(調査結果・事例・統計)を盛り込んだコンテンツは、AIに引用される確率が高まると考えられる。薄い情報をページ数だけ増やす戦略は通用しなくなる可能性が高い。

  3. 構造化データ(Schema.org)を整備する

    FAQページ・製品情報・レビュー・企業情報などに構造化データマークアップを適切に設定することで、AIが情報を正確に読み取りやすくなる。技術的な実装はエンジニアとの連携が必要だが、どの情報をAIに正確に伝えたいかの要件定義はビジネス側が主導すべきだ。

  4. ブランド認知施策を強化する

    指名検索を増やすためには、オフライン・オンライン問わずブランド露出を増やすことが根本的な解決策だ。PR活動・SNS運用・セミナー登壇・業界メディアへの寄稿など、検索エンジン以外の接点からブランドを知ってもらう施策の重要性が相対的に高まっている。

  5. 広告戦略を再評価する

    オーガニック流入が減少する局面では、Google広告(特にブランドキーワード広告)の役割が変化する可能性がある。AI Overviewsが表示される検索結果でも広告枠は維持されているとされるため、広告とSEOの予算配分・役割分担を改めて検討する価値がある。

  6. AI表示状況を定期的にモニタリングする

    自社が対象とする主要キーワードでAI Overviewsがどのように表示されているかを定期的に確認する。競合他社の情報が有利に引用されていないか、自社情報が誤って伝えられていないかをチェックする体制を整えることが重要だ。現時点では手動確認が中心になるが、将来的にはモニタリングツールの整備が進むと予想される。


用語解説

※1 AI Overviews(AIオーバービュー)
Googleの検索結果ページ上部に表示されるAI生成の要約回答。複数のWebページの情報を統合して提示し、ユーザーが個別サイトを訪問しなくても概要を把握できる。2024年に米国でローンチ。
AI Mode(AIモード)
Googleが展開する対話型の検索体験。チャット形式で複数回の質問をやり取りしながら情報を深掘りできる。ChatGPTやPerplexityのような対話型AI検索に対抗する位置づけと見られる。
※2 ゼロクリック検索(Zero-Click Search)
ユーザーが検索結果ページ上で情報を得てしまい、個別WebサイトへのクリックがゼロのままセッションがAIによる回答完結型の体験が増えると、ユーザーがどの情報に触れて購買判断を形成したかが追跡困難になる可能性がある。強調スニペット(Featured Snippet)の普及で以前から増加傾向にあったが、AI Overviewsにより加速が懸念される。
GEO(Generative Engine Optimization)
AI生成型検索エンジン(Google AI Overviewsなど)に自社コンテンツが引用・参照されやすくするための最適化施策。従来のSEO(検索エンジン最適化)の概念を拡張したもので、業界内で議論が始まっている。
ユーザーが特定のブランド名・サービス名・企業名を直接検索すること。ブランド認知度の高さを示す指標の一つであり、AIによる汎用回答の影響を受けにくいとされる。

この記事の前提と限界について

本記事で述べた影響・予測は、執筆時点の公開情報と業界内の議論を基にした見解であり、確定的な事実として断言できるものではない。AI OverviewsおよびAI Modeの日本語・日本市場への展開時期・仕様は、Googleから正式に公表されていない部分も多い。また、ユーザー行動やSEO指標への実際の影響は、展開後の実データを見なければ正確には評価できない。公式情報を定期的に確認しながら、自社の実測データと照らし合わせて戦略を調整することを推奨する。


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